物件情報に「厩舎付き、敷地1ヘクタール」とあり、帰りの車の中でもう頭の中で計算を始めている。馬を飼う土地の広さについて、日本の公的な数字はありません。農林水産省の指針は面積を示さず、放牧地やパドックを積極的に使うことを勧めるだけです。比較のために挙げると、イギリスの福祉規範は草だけで養う場合、良い放牧地を1頭あたり0.5〜1ヘクタールとしています。
この記事は、馬と暮らせる物件や初めての自分の厩舎を探している方に向けたものです。日本の指針が書いていること、海外の数字がなぜ食い違うのか、馬房の広さの決め方、見学の前に確かめることをまとめました。
馬を飼う土地について日本の指針が書いていること
農林水産省の「馬の飼養管理に関する技術的な指針」(令和5年7月26日)には、馬房の広さも放牧地の面積も数字では書かれていません。指針は、条件が許す範囲で放牧地やパドックを確保し「積極的に活用することが望ましい」とし、「屋内のみでの飼養を避け、長時間屋内に閉じ込めない」と求めています。
もう一つ大事な点があります。この指針は「競馬や乗馬クラブ等で供用される馬を対象として想定していない」と明記しています。つまり、競走馬や乗馬クラブの施設基準として書かれたものではありません。日本で面積の目安を知りたければ、海外の資料を比較として読むことになります。
| 国と出典 | 1頭あたりの土地 | 数字の意味 |
|---|---|---|
| 日本、農林水産省指針(2023年) | 数字なし | 放牧地・パドックの活用を推奨 |
| イギリス(イングランド)、Defra規範(2017年) | 0.5〜1.0ha | 草が食事のすべての場合 |
| アメリカ、大学の普及事業(2012年、2019年) | 1.5〜2エーカー(約0.6〜0.8ha) | よく管理された開けた土地 |
| アメリカ、運動のみ | 0.1エーカー(約405m²) | 乾草を与えている馬の運動場 |
| ポーランド、2010年の規則 | 0.1ha以上 | 屋外飼養の法定最低限 |
| ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、スペイン | 数字なし | 十分な広さを求めるが数字はない |
海外の数字が食い違う理由
イングランドの馬の福祉に関する実施規範は、英国環境・食料・農村地域省(Defra)が動物福祉法に基づいて出したものです。必要な面積は草の種類、土地の状態、季節、馬のタイプ、放牧地の管理によって変わると述べたうえで、「補助飼料を与えない場合」に1頭あたり0.5〜1.0ヘクタールとしています。アメリカの普及事業ネットワークは、まず馬に必要な空間についての研究はほとんどないと認め、そのうえで1.5〜2エーカーを目安にしています。1エーカーは0.405ヘクタールです。
数字が食い違うのは、三つの別の問いに答えているからです。馬を養うための土地、運動させるための土地、そして厩舎と作業場が建つ土地です。アメリカ東部の2エーカーは、南部や中西部、西部では2〜10エーカーになり、灌漑のない乾いた土地では30〜38エーカーにもなります。毎日乾草を与える馬ならずっと少なくて済み、イングランドの規範も、主に厩舎で過ごす馬にはより狭い面積で足りる場合があるとしています。
ですから、物件の面積を見る前に、1年のうち何か月を草で養うのかを決めてください。草で足りない分は乾草を買うことになり、その計算は馬が食べる乾草の量の記事で扱っています。フロリダ大学の普及事務所が1頭あたり1.5〜2エーカーの開けた土地と書くとき、大事なのは「開けた」という言葉です。林や庭、私道は敷地に含まれていても、草を食べる場所にはなりません。
広い土地が良い土地とは限りません。イングランドの規範は、ぼろ拾いや放牧地の輪換で食べ過ぎを防ぐこと、ひどくぬかるんだ土地から馬を移して地面の荒れや繋皹(けいくん)を防ぐことを求めています。ぬかるみの時期には、立ったり横になったりできる水はけの良い場所が必要です。蹄葉炎になりやすい馬には栄養の多い草がかえって問題になることがあり、どれだけ放牧するかは獣医師と相談して決めることです。
放牧地、パドック、馬場は別の場所
放牧地、パドック、馬場はそれぞれ役割が違いますが、物件情報ではまとめて「土地」と書かれがちです。放牧地は馬を養う場所です。パドックは運動や悪天候のときに出す小さな囲いで、草は期待しません。馬場は乗るための地面です。
ドイツ連邦の指針は、パドックを2頭までで150平方メートル以上、それを超える1頭ごとに40平方メートルを加えるとしており、3頭なら190平方メートルです。アメリカの運動だけの囲いは0.1エーカーです。馬場については、FEI(国際馬術連盟)の馬場馬術規程が競技用の馬場を60メートル×20メートルと定めています。1,200平方メートル、つまり0.12ヘクタールは、何も養わない土地です。
馬房の広さは体高から決める
日本の指針に馬房の広さの数字はありません。参考になるのは、馬の体高から計算するドイツとオランダの方法です。ドイツ連邦の指針(2009年)は、馬房の床面積を(2×き甲の高さ)²以上、短い辺をき甲の高さの1.75倍以上としています。オランダの業界ガイドも同じ式を使い、新築では12平方メートル以上を勧めています。
| き甲の高さ | 計算 | 馬房の最低面積 |
|---|---|---|
| 1.30m | (2×1.30)²=2.60² | 6.76m² |
| 1.48m | (2×1.48)²=2.96² | 8.76m² |
| 1.68m | (2×1.68)²=3.36² | 11.29m² |
体高がはっきりしない場合は、馬の測り方を先に確認してください。イギリスとアメリカは固定の寸法で考えます。イングランドの規範は英国馬協会(BHS)の最低寸法として、ポニーに3.05×3.05メートル、馬に3.65×3.65メートル(13.32平方メートル)を挙げています。ポーランドは馬房の広さを法律で決めており、き甲1.47メートルまでの成馬で6平方メートル以上、それを超えると9平方メートル以上、子連れの母馬は12平方メートル以上です。
仲間と風雨よけも広さのうち
広い放牧地に馬が1頭だけでは、面積では測れない条件を満たせません。イングランドの規範は、馬は群れで暮らす動物であり、ほかの動物よりも別の馬を仲間にすることが「はるかに良い選択」だとしています。ドイツの指針も、仲間の馬なしで1頭だけ飼うことは馬の本来の社会行動に反し、少なくとも互いに見えて、聞こえて、においがわかる状態を確保するよう求めています。
同じドイツの指針は、1年中放牧する馬には全頭が同時に入れる風雨よけを求めており、生け垣や林でもかまいません。1頭だけなら、ほかの馬がいる預託厩舎のほうが自分の土地より向いていることもあります。その比較は馬の預託費用の記事を参考にしてください。
物件情報で確かめること
敷地全体の面積は、そのうち何割を馬が食べられるかがわかるまでほとんど意味がありません。見に行く前に、次の点を尋ねてください。
- 放牧地の面積。住宅、庭、林、作業場とは別の数字で。
- 放牧地がいくつに分かれているか。一つを休ませながら別の区画を使えるか。
- 水はけ。雨のあとに行き、地面が荒れやすい出入り口を見てください。
- 各放牧地の水と、自然または建物の風雨よけ。
- 見えやすく丈夫な柵。ドイツの指針は、き甲の高さのおよそ4分の3の高さを目安にしています。
- 実際に測った馬房の寸法。「厩舎あり」だけでは足りません。
- 装蹄師や獣医師が作業できる舗装された場所。厩舎がない場合にイングランドの規範が求めています。
- 地域の規制。厩舎や馬場を建てたいなら、購入前に自治体に確認してください。
Hoofineにできること
Hoofineの馬の物件ボードには、購入、賃貸、預託の物件が並びます。掲載では敷地全体と放牧地を別々の数字で示せるほか、馬房やパドックの数、馬場の広さも載せられるので、大半が芝生の1ヘクタールを見分けやすくなります。ただし数字は掲載者が入力したもので、私たちは土地や建物を測量・点検・確認していません。質問の出発点として使い、放牧地はご自分で歩いてください。馬を飼う土地として十分かどうかの正直な答えは、雨の続いた1週間のあと、その土地が見せてくれるものです。



