種馬場の申込書に種付け希望日を書く欄があり、来年の子馬は真冬でも真夏でもなく春に生まれてほしい。馬の妊娠期間を調べると、答えはたいてい「約340日、およそ11か月」です。平均としては妥当ですが、健康な牝馬でもその前後に数週間ずれて出産するため、この数字だけで出産計画を立てるとうまくいきません。
この記事は、次のシーズンの種付け日を決めようとしている繁殖牝馬の所有者に向けたものです。実際に数えた研究が何を示したか、何が日付を動かすか、出産時期の幅を自分で計算する方法、1月1日が重要な理由、そして検査の時期を順に見ていきます。
実際に数えた馬の妊娠期間
日本の手がかりはJRA日高育成牧場にあります。自家生産の108頭では妊娠期間が318日から363日(平均341.8日)で、牧場は正常な妊娠期間を320〜360日とし、分娩予定日からずれるのがほとんどだと書いています。
海外ではさらに大きなデータがあります。超音波で受精から数えた英国のサラブレッド433例では平均344.1日、範囲は315〜388日で、すべて生存子馬でした。最大のデータであるドイツのサラブレッド16,226例では平均347.0日、範囲306〜390日です。
| 対象 | 例数 | 平均(日) | 範囲(日) |
|---|---|---|---|
| JRA日高育成牧場 | 108 | 341.8 | 318〜363 |
| サラブレッド(英国) | 433 | 344.1 | 315〜388 |
| サラブレッド(ドイツ) | 16,226 | 347.0 | 306〜390 |
| 温血種(ブランデンブルク州立種馬場) | 786 | 338.5 | 313〜370 |
| 重種牝馬(日本) | 209 | 334.9 | 313〜352 |
温血種の数字はドイツの州立種馬場、重種の数字は日本の重種牝馬の研究によるものです。340日は妥当な中間値ですが、どのデータでも正常な妊娠がその前後に数週間広がっています。
日付を動かす要因
最も大きいのは牝馬自身です。スペイン・ヘレスの軍馬牧場の研究では牝馬個体が最大の要因で、ルシターノの研究も、牝馬は生涯を通じて長め・短めの傾向が一定だとしています。日本の重種牝馬でも、前回の妊娠期間が次回の最もよい予測材料でした。出産歴があるなら、その記録はどの表よりも役に立ちます。
次が種付けの月です。アンダルシアンとアラブでは種付けが1か月遅れるごとに約3日短くなり、ルシターノでは5月の種付けが1〜4月より約5日、6〜7月では約10日短くなりました。オールド・クラドルーバーでは3月受胎が343.9日、7月受胎が334.9日で、差は9日です。一方、JRA日高のデータでは生まれ月(2〜5月)による差はなく、「寒いと出産が遅れる」という通説とは合いませんでした。フランス国立馬事研究所(IFCE)は冬に出産予定の牝馬ほど長くなるとしており、見解は分かれています。なお、JRAの育成牧場管理指針は、妊娠馬への照明処置を早く始めすぎると妊娠期間が10日ほど短くなるとしています。
牡の子馬はやや長くなる傾向があります。英国のサラブレッドでは牡346.2日、牝342.4日で差は3.8日、日本の重種では牡337.1日、牝332.7日で差は4.4日でした。ただしルシターノの研究では性別の影響は見られませんでした。
品種の差は思ったより小さく、体の大きさは関係しないかもしれません。中欧25品種の研究では品種間の差は最大11日で、体格との有意な相関はありませんでした。ポニーについても見解は一致しません。IFCEはポニーの牝馬はやや短く320〜345日とし、英国王立獣医大学(RVC)はやや長いのが普通としています。信頼できる二つの機関が逆を向いている以上、ポニーという区分だけでは出産日はほとんど読めません。
出産予定日を手で計算する
計算ツールがしていることは同じです。種付け日、できれば獣医が記録した排卵日に340日を足します。簡単な方法は「25日戻して1年進める」で、2月29日をまたぐときだけ1日遅くなります。
2027年5月1日に種付けした牝馬なら、340日後は2028年4月5日です。320日後は3月16日、360日後は4月25日。英国の研究で生存子馬が生まれた315〜388日を当てはめると、3月11日から5月23日までです。馬の出産は一日ではなく、約2か月の幅で考えるのが正直な答えです。
IFCEも、理論上の予定日は出産日を正確に知る基準にはならず、注意深く見守り始める目安にすぎないとしています。出産歴があれば過去の妊娠期間の側に幅を寄せ、初産なら幅全体に備えて馬房、分娩の見張り、自分の予定を組んでください。
1月1日から逆算する種付け日
FEIの規程では北半球の馬の公式な誕生日は1月1日、南半球は8月1日です。日本でもJRAが2001年に数え年から満年齢へ変更し、生まれた年を0歳として1月1日に年を重ねます。12月31日に生まれた子馬は翌日には1歳です。
2027年2月15日に種付けすると、340日後は2028年1月21日で余裕があります。しかし同じ種付けで315日なら2027年12月27日に生まれます。英国の研究の最短の生存例でも1月1日以降に収めるには、2月20日以降に種付けします。それより遅ければ、種付けが遅いほど妊娠期間が短くなる傾向が有利に働きます。種馬場の受付期間と、牝馬の発情の見込みも、シーズン前に確認しておきましょう。
種付証明書は保管してください。フランスのSIREは出生届を15日以内、オランダのKWPNは子馬の登録を10日以内に求めています。日本の登録期限は本稿では確認していないため、子馬が生まれる前にご自身の登録機関の規則を確かめてください。
検査の時期とそれぞれの目的
検査日は、牝馬が種馬場へ出発した日ではなく、獣医が確認した排卵日から数えます。コロラド州立大学の馬繁殖研究室は最初の超音波検査を排卵後14〜16日に勧めています。ここで確かめるのは受胎と双子の有無です。RVCは14〜17日の減胎を、残る妊娠へのリスクが小さい短い処置としています。
次は心拍です。メルク獣医マニュアルは24〜25日で心拍が見え、25〜30日の確認を挙げています。25日に見えなければ24〜48時間後に再検査するのがコロラド州立大学の助言です。35日も節目で、その時点で空胎なら同じシーズンに再種付けできることが多く、35日以降に流産すると通常その年は発情が戻りません。
2027年4月10日の排卵なら、最初の検査は4月24〜26日、心拍の確認は5月5日以降です。実際の予定は獣医が決め、40〜60日や秋の確認を加えることもあります。
早産、長い妊娠、獣医に連絡するとき
馬の妊娠期間が320日に満たない出産は早産とみなされます。JRA日高育成牧場もIFCEも同じ線を引いています。一方で英国の研究では388日でも生存子馬が生まれており、長いこと自体は緊急事態ではありません。予定の幅を過ぎた、見慣れない兆候がある、少しでも気になる、そのときは獣医に連絡してください。この記事は獣医学的な助言ではなく、判断するのはその牝馬を診ている獣医です。
種付料から検査までの費用は馬繁殖の費用に、種牡馬側から見た同じ暦は種付料の設定にまとめています。
Hoofineにできること
牝馬がいつ出産するかは、Hoofineにもどの計算ツールにもわかりません。サイトでは繁殖ページで種牡馬と種馬場を比べられるので、日付を計画する時間があるうちに送り先を検討でき、検査を頼める馬の獣医も探せます。妊娠、検査、書類のことは、あなたと獣医と登録機関のあいだで進めてください。



