見学に行った牝馬は厚手の馬着を着たままで、冬毛のせいで体の線がほとんど見えません。売り手は「状態はいいですよ、5くらいです」と言います。9点法の5なら中程度の体つきですが、5点法の5なら肥満です。馬のボディコンディションスコアを使う前に、その数字がどの尺度のものかを確かめる必要があり、冬は目よりも手が頼りになります。
この記事は、冬を迎える馬の持ち主と、ほとんど見えない馬を厩舎で見極めようとしている購入希望者のためのものです。スコアが何を測るのか、どの国がどの尺度を使うのか、首だけを見る別のスコア、冬毛で評価の仕方が変わる理由、そして蹄葉炎についてスコアから何が言えるのかを順に見ていきます。
日本の生産・育成牧場で使われる9点法
日本語で読める資料としては、JRA日高育成牧場が2021年に「馬事通信」で解説したBCS(ボディコンディションスコア)があります。競走の現場ではなく、生産と若馬の育成の現場から書かれた資料です。尺度は1点から9点までで、1点は「脂肪がほとんど無く、削痩している状態」、9点は「極度の肥満」です。
見る部位は「頸」「き甲」「肩後方」「肋部」「背~腰の脊椎」「尾根」の6か所です。同じ資料によれば、一般的なサラブレッドの生産・育成牧場で管理されている馬の多くはBCS4~6に当てはまり、「肋骨が見えないが、容易に触ることができる」ならBCS5です。高齢馬や長距離向きの体型の馬は、ほかの部位が太っていても背骨の周りに肉が付きにくいため、肋部で評価するよう勧めています。
馬のボディコンディションスコアが測るもの
9点法の元は、1983年にテキサスA&M大学のヘネキ(Henneke)らが発表した短い論文です。成熟したクォーターホースの牝馬20頭を調べ、脂肪が見えて触れる場所として先の6部位を選びました。32頭の牝馬では、スコアが体脂肪率のばらつきの65%を説明し、体重や体高、胸囲だけでは体脂肪と有意な相関がありませんでした。
つまりスコアは体の大きさではなく、蓄えた脂肪の推定です。同じ体重の2頭でもスコアが違うことはあり、体重の量り方は馬の体重についての記事で扱っています。
9点法と5点法では「5」の意味が違う
ヘネキの9点法はアメリカの標準です。米国馬臨床獣医師協会(AAEP)は保護・引退馬の施設に対し、すべての馬をヘネキのチャートで4から6に保つよう求めています。一方、1988年にオーストラリア・ビクトリア州の農業部局にいたキャロルとハンティントンは、既存の方法を応用して一般に0から5とされる尺度をまとめ、372頭で評価者が違っても再現できることを示しました。イギリスでは0から5が使われ、World Horse Welfareは両方の方式を紹介したうえで、経験が少ないなら0から5のほうが使いやすいとしています。
| 国・地域 | 出典 | 尺度 | 健康とされる範囲 |
|---|---|---|---|
| 日本 | JRA日高育成牧場 | 1~9 | 生産・育成牧場の馬の多くはBCS4~6 |
| アメリカ | AAEP | ヘネキ、1~9 | 4~6 |
| イギリス | 英国馬協会(BHS)、イングランドの福祉規範 | 0~5 | 2.5~3(BHS) |
| フランス | フランス馬・馬術研究所(IFCE) | 独自の0~5 | 2.5~3.5 |
| ドイツ | Kienzle & Schramme(2004年) | 1~9、温血種向け | 要旨では示されていない |
| オランダ | Sectorraad Paarden | 0~5 | 3 |
| EU | EUの動物福祉ガイド(AWINに基づく) | キャロル&ハンティントン、1~5と表記 | 示されていない |
BHSは、獣医師から別の指示がない限り5点中2.5~3を健康的な脂肪の付き方としており、イングランドの福祉規範も同じ0~5の表を載せています。フランスのIFCEは独自の0~5の表で最適を2.5~3.5とし、競走馬や総合馬術の馬はそれより低めです。ドイツでは181頭の温血種から温血種向けの1~9の方式が作られ、EUの福祉ガイドはキャロルとハンティントンを1~5として載せています。ネットで見つかる表はどれもこのいずれかなので、数字を読む前に何点満点かを確かめてください。
首の脂肪を見るクレスティネックスコア
首の上縁、たてがみの下につく脂肪には別のスコアがあります。2009年にカーターらが0から5のクレスティネックスコアを示し、インスリンなどの血液項目と関連することを確かめました。米ミネソタ大学のエクステンションは2以下を目標にするよう勧め、3以上ならたいてい首に脂肪がついた状態だとしています。
首は見るだけでなく触ってください。BHSによれば、首の脂肪はほかの部位のふかふかした脂肪と違って硬く、左右に動かしにくいことがあります。また種牡馬は自然に首が太くなるので、去勢していない牡馬の太い首からわかることは多くありません。
冬毛の季節は目ではなく手で
この問題は尺度が作られたときからありました。ヘネキらは、冬は長く厚い被毛が見た目での評価を難しくしたため、正確に評価するには馬体を触ったと書いています。World Horse Welfareはもっとはっきり、馬がどれだけ脂肪をつけているかは目では判断できないと述べています。
体の状態は季節によっても変わります。イギリスのブリストル大学の研究では、放牧時間の長い乗用馬96頭を冬の終わりと夏に評価し、肥満の割合が27.08%から35.41%に上がりました。冬に少し痩せるのは、この流れに沿った変化です。首は逆で、クレスティネックスコア3以上の馬は冬の終わりに45.83%、夏の終わりに33.33%でした。研究チームは、首の脂肪が本当に増えたのか、冬毛で判断しにくくなっただけなのかはわからないとしています。
ですから、手のひらを当てて評価します。馬着を外し、肋部、肩の後ろ、首の上縁、尾根を手でなぞってください。腹は見なくてかまいません。ドイツの温血種の研究によれば、腹の大きさは筋力と腸内の粗飼料の量で決まるため、痩せた馬にも太った馬にも大きな腹はあります。そして毎月スコアを記録してください。オーストラリアの研究では、持ち主は自分の馬を研究者の評価より痩せていると見ていました。
馬の肥満と蹄葉炎、EMS
高いスコアは警告であって診断ではありません。ウェルシュとダートムーアを中心とするポニーの群れを春の放牧で追跡した研究では、9点法で7以上、クレスティネックスコア4以上が、その後蹄葉炎を起こすポニーを予測しました。血中のインスリンとレプチンも予測でき、指標を組み合わせても血液検査単独より精度は上がりませんでした。イギリスの1,010頭の研究では、過去3か月の体重増加が蹄葉炎のリスク因子でした。
スコアが当てにならないこともあります。英王立獣医大学が446頭のポニーを3年間追跡したところ、72.2%がBCS7~9(9点法)でしたが、蹄葉炎を予測した因子は血液マーカーでした。欧州馬内科学会(ECEIM)の馬メタボリックシンドロームに関する合意声明は、痩せた体型でもEMSはありうること、脂肪が多くてもEMSでない馬もいること、9点法で7を超えるとスコアと体脂肪の関係が直線的でなくなることを述べています。太った馬をEMSと診断する前に、獣医師がインスリン調節異常を示す必要があり、それには血液検査が要ります。
痩せている側も見逃せません。ミネソタ大学のエクステンションは、アメリカで一般的な9点法でBCS3以下を、馬着が必要な理由の一つに挙げています。詳しくは馬着をいつ着せるかをご覧ください。冬にスコアが下がるなら、たいてい飼料が足りておらず、乾草の量から見直すのが出発点です。スコアがその馬にとって何を意味し、検査が必要かを決めるのは獣医師です。
購入前の見学でスコアを確かめる
広告の写真では確実な評価はできず、冬毛は夏の写真なら見えるものを隠します。見学では手で確かめてください。
- 馬着を外してもらい、明るく平らな場所で評価します。
- 6部位を自分で触ります。軽く押して肋骨が見つからなければ、毛の見た目にかかわらず脂肪です。
- 売り手がスコアを言ったら、何点満点かを聞きます。
- 首の上縁をつまみます。牝馬や騸馬で硬い脂肪があれば確認する価値があり、種牡馬ならそれほどではありません。
- 蹄葉炎の経歴、放牧の制限、今の飼料を聞きます。
イギリスの研究では、持ち主が自分の馬の31.2%を肥満と報告し、コブや在来種、太りやすい馬で多く見られました。丸い馬だから見送る必要はありませんが、一生食事を管理していく馬になります。気になる点は購入前検査の前に伝えておけば、血液検査を追加すべきかを獣医師が判断できます。
Hoofineにできること
Hoofineは馬のスコアを付けませんし、冬毛のまま撮った掲載写真から馬の状態はわかりません。サイトでできるのは、販売中の馬を探して実際に触りに行けるようにすることと、決める前に診てもらえる馬の近くの獣医師を探す手伝いです。



