十一月の朝、乗馬クラブの洗い場に霜が降り、隣の馬房の馬はもう中綿入りの馬着を着ています。自分の馬にも着せるべきか、馬着を腕にかけたまま馬房の前で迷う。よく言われるとおり馬は寒さに強い動物ですが、馬着が要るかどうかを決めるのは、温度計よりも目の前の馬です。毛、年齢、体つき、雨風をしのげる場所があるか、そして濡れているかどうかです。
この記事は、自馬を持って初めての秋を迎える人のためのものです。馬がどこまで寒さに耐えるのか、研究者が馬自身に尋ねたときの答え、馬着が必要な馬、気温の早見表が見落とすもの、そして着せすぎがなぜ問題なのかを順に見ていきます。
馬は寒さに強い。人の寒さで決めない
農林水産省の「馬の飼養管理に関する技術的な指針」(2023年)は、馬の適温域を「おおむね7~23℃が目安」とし、馬の体感温度は気温だけでなく、湿度、日射、風などの影響も受けると書いています。日本馬事協会の「馬のウェルフェア飼養管理評価マニュアル」も同じ7〜23℃を目安とし、飼養ステージや品種によって差があるとしています。
海外の数字は少し違います。フランス馬・馬術研究所(IFCE)の解説は、服を着た人が快適なのは18〜24℃、温帯の気候で毛刈りをしていない馬はおよそ5〜25℃としています。健康な成馬に、飼料の追加と避難場所という助けが必要になる温度はマイナス15℃前後です。米国のミネソタ大学エクステンションは、夏毛で華氏41度(5℃)、冬毛で華氏18度(約マイナス8℃)としています。
馬は寒さに強いと言っても、その強さは一つの数字では表せません。ノルウェーの研究者による2020年の総説によると、この下限の温度は決まった値ではなく、年齢、品種、毛、飼料、体の状態、慣れによって変わり、どの数字も測った馬の集団にしか当てはまりません。15〜20℃で飼われていたトロッターでは5℃、冬に慣れたクォーターホースではマイナス15℃という報告があります。
日本の競馬の世界からも同じ声があります。福島馬主協会のコラムで、獣医師は「馬はもともと寒さには強い動物です」と述べ、暑い時期の熱中症にあたるような心配は、北海道のような寒冷地以外ではないと話しています。競走馬の現場での発言で、乗馬クラブの馬を調べた結果ではありません。
気温より雨と風
同じノルウェーのグループは、23頭の馬に三つの記号を使って「着せて」「脱がせて」「そのままで」を伝えることを教え、さまざまな天気で尋ねました。総説によると、マイナス10℃より低いと馬は試験の80〜90%で馬着を選び、20℃を超えるとすべての試験で脱ぐほうを選びました。天気のよい10℃では、着ていなかった馬のうち馬着を求めたのは5%です。ところが気温6℃で雨が降り、風速14m毎秒の風が吹いた日には、試験した馬すべてが馬着を求めました。
馬が馬着を嫌っていたわけではありません。全体では試験の66.2%で着たままでいるほうを選んでいます。わかったのは、馬の選択が習慣ではなく天気に従うということです。ノルウェーの23頭での結果であることは、頭に置いておいてください。
ほかの証拠も同じ方向を指しています。避難小屋のある屋外で冬を越したアイスランドホースの群れでは、気温がマイナス30℃まで下がっても、震えが見られたのは一度だけ、強い雨の降る5℃の日でした。ミネソタ大学エクステンションの冬の管理の案内は、0.1インチ(約2.5mm)の雨でも毛が寝て断熱が落ち、寒冷ストレスの原因になりうるとしています。乾いた冬毛は空気を抱え込みますが、濡れた毛にはそれができません。
ですから寒い夕方にまず確かめるのは、気温ではなく、馬が雨と風を避けられるかどうかです。農林水産省の指針も、厳寒期には敷料を増やし、すきま風を防ぐなどの保温対策を挙げ、極端に低温な天候から馬を守る手段として、敷料の追加、毛布の使用、厩舎への収容を並べています。指針の言葉は「毛布」で、何度から使うかという温度は書かれていません。総説も、避難場所は馬が自分で使えるぶん馬着より柔軟な答えで、馬着は悪天候での有用な補いだとしています。
馬着が必要な馬
日本の指針やマニュアルに、どんな馬に馬着が要るかの一覧はありません。農林水産省の指針が特に保護を求めているのは、出生直後の子馬、若齢馬、身体的に欠陥のある馬です。具体的な条件を挙げているのはミネソタ大学エクステンションで、基準は日付ではなく馬です。
- 放牧中に避難場所がなく、気温または体感温度が華氏5度(マイナス15℃)を下回る
- 雨、氷、凍雨で濡れるおそれがある(雪ではふつう問題にならない)
- 冬毛を毛刈りしている
- ごく若い、または高齢である
- 寒さに慣れていない
- ボディコンディションスコアが3以下である
イングランドの公的な福祉規範も、ほぼ同じことを言っています。丈夫な品種の多くは馬着なしで一年じゅう屋外で暮らせ、着せないほうが調子がよいことも多い一方、それほど丈夫でない品種や、毛刈りをした馬、高齢の馬は、寒く湿った天気で馬着が必要になることがあります。英国馬協会(BHS)はこれに、サラブレッドやアラブのように毛の細い品種、痩せている馬、体調の悪い馬を加えています。
いちばん大きいのは毛刈りです。IFCEは、毛刈りをした馬の下限はマイナス15℃より5℃に近く、その場合は馬着が必要だとしています。毛刈りをすれば、その冬は馬着の管理を引き受けたことになります。暖かい場所から寒い場所へ移す馬にも時間が要り、IFCEは約15℃の低下に慣れるのに10〜20日かかるとしています。
気温の早見表が見落とすもの
秋になると、気温と中綿のグラム数を組み合わせた表をよく見かけます。英国で広く出回っている表の一つは、馬術用品の業界団体British Equestrian Trade Association(BETA)が出しているもので、馬具の販売会社の表を許可を得て転載したと注記されています。だから間違いだというわけではありません。ただ、それは商品についての表です。あなたの馬が毛刈りをしたサラブレッドなのか冬毛の厚い馬なのか、風をよける場所があるのかは、表にはわかりません。
農林水産省の指針にも、イングランドの福祉規範にも、EUの動物福祉プラットフォームのもとで作られた任意の手引きにも、馬着を着せる温度は書かれていません。いちばん近いのはBHSで、多くの馬は5℃を下回るまで馬着なしで快適に過ごせるとし、重い馬着に替えるのは馬が寒がる様子を見せたときだけにするよう勧めています。BHSは中綿の量で馬着を分け、0〜100gを薄手、150〜300gを中厚、350g以上を厚手としています。
その重さの裏づけは薄いものです。総説が引く実験では、4頭の馬がマイナス23℃の屋外に1時間立ちました。その後の腰の体表温度は、馬着なしが22.3℃、中綿なしの馬着が26.8℃、200gが30.3℃、400gが31.5℃で、中綿入りの二枚の差は統計的に有意ではありませんでした。4頭と寒い一日では、表は作れません。
着せすぎも福祉の問題
馬は風からは歩いて逃げられますが、昼前に日が差しても馬着を自分では脱げません。イングランドの福祉規範は、馬着で馬が暑くなりすぎないよう注意し、天気がよくなったら放牧用の馬着を外すよう求めています。BHSが挙げる暑すぎるサインは、馬着の下の発汗、荒い呼吸、元気のなさや苛立ち、しきりに体をこすること、温かく湿った皮膚です。確かめるには、き甲の後ろで馬着の下に手を入れます。心地よく温かく、乾いていれば合っています。
代償はもう一つあります。馬は体を温めるためにエネルギーを使うので、BHSは冬を、太りすぎの馬が自然に体重を落とせる時期だとしています。飼料の与えすぎと着せすぎは体重増加と蹄葉炎のリスクを高めるおそれがあるとして、特別な事情がないかぎり太った馬には着せないよう勧めています。これはBHSの助言で、着せすぎた馬の蹄葉炎を測定した研究は見つかりませんでした。
馬着は下の毛も変えます。米国ウィスコンシン州で16頭を調べた研究では、1月の頸の毛の長さは、馬着を着た群で43mm、着ていない群で58mmでした。毛の伸び方の推移はどちらも同じです。十月から着せている馬は、一月に頼れる自前の毛がそれだけ短いということです。
最初の秋の習慣
馬は寒さに強いという前提から始めて、天気予報より先に馬を見ます。BHSが挙げる寒さのサインは、震え、尾を体にきつく引きつけること、避難場所を探すことなどです。厚い馬着に手を伸ばす前に、乾草が足りているかを確かめてください。BHSは、粗飼料を十分に食べられることを、寒い時期に体温を保つ最も効果的な自然な方法の一つとしています。
着せるなら、濡れた馬には着せないこと。これはミネソタ大学エクステンションの注意です。イングランドの福祉規範は、定期的に、できれば毎日外して体を確かめ、濡れた一枚を乾かせるよう予備を持つことを求めています。昼に替えられないなら、使える中でいちばん薄い馬着を選ぶのがBHSの助言です。
これらは獣医師の診察の代わりにはなりません。冬に痩せていく高齢の馬に要るのは、厚い馬着より先に、歯や健康状態の確認かもしれません。痩せた馬、病気の馬、高齢の馬に馬着が要るかどうかは、その馬を診た獣医師に尋ねてください。
私たちの役割
Hoofineには、あなたの馬が寒がっているかどうかはわかりません。できるのは、尋ねる価値のある人につなぐことです。高齢の馬や痩せた馬についてはディレクトリの馬の獣医師に、表から選ぶのではなく採寸して体に合わせる馬着については馬具店に相談できます。預託先を選ぶなら、預託先の一覧で、放牧地の避難場所や、誰が馬着を着せ替えるのかを尋ねてください。着せ替えは別料金のことが多く、自馬預託の費用についての記事にまとめています。馬着は予算の一行で、全体は馬の維持費についての記事にあります。



