広告には「16歳、健康、まだまだ乗れます」とあり、値段は同じページに並ぶ8歳の馬よりずっと安い。これが買い得かどうかは、売り手には答えられない問いで決まります。馬の寿命はどれくらいで、そのうち乗れる年数は何年あるのか、です。
この記事は、初めて馬を買おうとして広告の年齢を読んでいる人のためのものです。死亡を実際に数えた調査が何を示したか、何歳から高齢とされるか、示された年齢をどこまで信じてよいか、そして最期に何を引き受けるのかを順に見ていきます。
数えてみると、馬の寿命は「25年」より短い
日本でよく目にする数字は25年です。JRAは一般向けのページで「平均寿命は25歳」と書き、別のページでは「ウマの平均寿命は25年くらいといわれており」と伝聞の形で紹介しています。どちらも読み物のページで、研究報告ではありません。馬の平均寿命を調べて公表している日本の機関も、死亡時の年齢を集計した日本の統計も見つかりませんでした。
海外では、2020年の総説が平均20〜30年、最長は40年超としています。これは世話の行き届いた馬がどこまで生きられるかの話です。集団全体の死亡を数えた調査では、数字はもっと低くなります。
全国規模の数字があるのはフランスだけです。フランス馬・馬術研究所(IFCE)は平均寿命を18年とし、半数近くが18歳までに死に、26歳に達するのは5頭に1頭だとしています。化製場の4年分の記録を全国の登録簿と突き合わせた研究では、2歳まで育った馬の死亡時年齢の中央値は乗用タイプの馬で14.3歳、ポニーで16.9歳でした。病気、事故、安楽死による死亡の数字で、フランスの馬の死亡の約30%を占めると畜は含まれていません。ポニーの数字は、生年月日の記録があった一部のポニーだけにもとづいています。
スウェーデンでは、生命保険に入っていた馬の死亡時年齢の中央値は18.8歳で、最も多い原因は関節の問題でした。ただし同じ研究グループは、保険は一定の年齢で終わることが多く、高齢の馬のことは保険のデータでは分からないと注意しています。
数えられた集団で見るかぎり、馬の寿命の中央値は14〜19歳にあり、25年ではありません。30歳まで生きる馬はいますが、広告がそれを約束することはできません。
競走馬と引退馬のその後
日本でこの言葉を調べる人の多くは、競走馬のことを考えています。競走馬が何歳で引退するのか、引退後に天寿を全うする馬がどれくらいいるのかについては、さまざまな数字が出回っています。私たちは一次資料で確かめられなかったので、ここには書きません。
確認できるのは取り組みのほうです。JRAのページによると、日本では2017年に「引退競走馬に関する検討委員会」が立ち上げられ、馬術競技馬や乗用馬への転用(セカンドキャリア)の促進と、すべてのキャリアを終えた養老馬や養老牧場への支援が目的に掲げられています。2024年4月には一般財団法人Thoroughbred Aftercare and Welfare(TAW)が設立されました。
乗用馬として売られている元競走馬を見るときは、海外の二つの調査が参考になります。英国で15歳以上の馬を追った調査では、サラブレッドとその交雑種の死亡リスクがほかより高く、米国の高齢馬の調査ではサラブレッドであることが引退の危険因子の一つでした。競走を終えた年齢ではなく、これから乗れる年数と世話をする年数で考えてください。
ポニーは長生きか、最高齢の記録は
ポニーは馬より長生きする傾向があり、根拠があるのはそこまでです。フランスの調査ではポニーの中央値が最も高く、米国の動物病院の調査でも30歳以上の馬にポニーが目立って多くいました。品種ごとに馬の寿命を並べた表には、もとになる研究が見つかりませんでした。
記録として知られるのは、英国ランカシャーで1760年に生まれた荷船引きの馬オールド・ビリーです。ギネス世界記録は62歳を信頼できる記録のある最高齢としています。一方、研究者が使う寿命のデータベースAnAgeはこの記録を未検証とし、馬の最長寿命を57年としています。どちらにしても、広告の馬については何も教えてくれません。
馬の年齢を人間に換算する表には研究がない
馬の年齢を人間の年齢に直す表はどこにでもあります。JRAのページは馬の1歳、2歳、3歳を人間の6歳、12歳、17歳としています。海外でよく引かれる規則は、4歳までは1年を人間の6.5年、その後は2.5年と数えるもので、業界誌の記事として広まりました。これを導いたり検証したりした査読論文は見つかりませんでした。引用されている規則のとおりに計算すると3歳の馬は3 × 6.5 = 19.5歳で、JRAの17歳とすでに合いません。
二つの種を一つの物差しに載せた公表済みの方法は、2022年のNature Communications誌の論文にあるものだけで、年齢を記録上の最長寿命(馬57年、人間122.5年)で割ります。20歳の馬で比べると、引用されている規則どおりの計算は4 × 6.5 + 16 × 2.5 = 66、論文の物差しは20 ÷ 57 = 0.35、0.35 × 122.5 = 43です。この計算は私たちのもので、著者のものではありません。換算はたとえ話で、獣医の診察より多くを教えてはくれません。
何歳から高齢とされるか
| 線を引く人 | 年齢 |
|---|---|
| 「高齢馬」を研究する研究者 | 15歳 |
| 買い手(年齢が不利に働き始める) | 約16.5歳 |
| 所有者(自分の馬を年寄りと感じる) | 約22歳 |
2行目と3行目は2003年に発表された米国の一つの調査の数字なので、規則ではなく傾向として読んでください。それでも16歳の馬は、買い手が年齢を理由に値を下げ始めるちょうどその位置にいます。安いのにはそれも理由です。
あと何年乗れるかは別の問いです。米国の15歳以上の馬の所有者2,717人への調査では、馬の39.8%が完全に引退しており、その多く(61.5%)は15〜24歳の間に、主に健康上の問題で引退していました。何歳で乗るのをやめるべきかを公表している獣医の団体はありません。その馬にあと何年あるかは、暦ではなく購入前の獣医検査で獣医に尋ねることです。
高齢期に求められること
英国で15歳以上の馬200頭を獣医が診察したところ、95.4%に歯の異常があり、50.5%が速歩で跛行していました。この年齢の馬の約5頭に1頭には、クッシング病とも呼ばれるホルモンの病気PPIDがあると推定されています。同じ研究者たちは、馬が年をとるほど定期的な獣医の診察、装蹄、予防接種が減り、獣医が見つけた問題の多くに所有者が気づいていなかったとも報告しています。
高齢の馬を飼う費用を公表している機関はないので、数字は挙げません。増えるのは獣医と歯の手入れの請求で、毎月の維持費に上乗せされます。保険も年齢で変わります。英国のある大手保険会社の約款では、病気を含む通常の補償に入れるのは加入時に19歳までの馬です。日本の保険会社の年齢条件は確認していないので、馬を買う前に約款の年齢の項を自分で読んでください。
広告の年齢をどこまで信じるか
歯では分かりません。経験のある馬の獣医4人が、年齢の分かっているサラブレッド434頭の年齢を歯から推定したところ、実際の年齢との差は大きく、馬が年をとるほど広がりました。著者たちは、歯による年齢の推定は「根拠のある推測」にすぎないと結論しています。馬の本に必ず出てくるガルベイン溝も、同じ一連の論文で役に立たないとされました。
残るのは書類です。JRA日高育成牧場のブログによると、サラブレッドの子馬には2007年から血統登録の際にマイクロチップが使われています。乗用馬一般に個体識別を義務づける日本の法律は見つかりませんでした。EUの規則は生後12か月以内の個体識別を義務づけていますが、これは日本の馬には当てはまりません。見に行く前に生年月日を示す書類を見せてもらい、獣医にマイクロチップを読み取って書類と照合してもらいましょう。
最期を決めるのは馬主です
英国で15歳以上の馬908頭を追った調査では、死亡の94%が安楽死で、理由は跛行と疝痛が最多でした。イングランドの公的な福祉規範は、自然死する馬は9%にすぎないとし、安楽死の計画を立てておくことを所有者の重要な責任としています。馬を買うとは、おそらく自分がその決断をし、費用を払い、その後の手配をすると受け入れることです。
ルールは国ごとに違います。日本の動物の愛護及び管理に関する法律は馬を「愛護動物」に含めています。環境省の説明では、愛護動物をみだりに殺し又は傷つけた場合は5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金、遺棄した場合は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。同法第40条は、動物を殺さなければならない場合には「できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない」と定めています。
死んだ馬の扱いにも決まりがあります。化製場等に関する法律は、死亡獣畜の解体、埋却、焼却を、都道府県知事の許可を受けた場合などを除き、死亡獣畜取扱場以外で行ってはならないとしています。農林水産省が2023年に出した馬の飼養管理の指針は、競馬や乗馬クラブで使われる馬を対象にしていません。馬が元気なうちに、かかりつけの獣医に、その地域でどう進めるのかを聞いておいてください。
私たちの役割
Hoofineには、その馬が何歳まで生きるかは分かりません。広告にも分かりません。このサイトにできるのは、販売中の馬で年齢と価格を並べて見せること、Wanted掲示板で探している年齢を伝えられるようにすること、決める前に相談できる獣医や保険会社を案内することです。年齢が価格にどう響くかは、馬の購入価格についての記事にまとめています。



