乗馬クラブの掲示板に「今週は駆虫です。全頭、同じ薬」と貼り紙が出ます。あるいは、買ったばかりの馬の書類に、最後にいつ駆虫したのかがどこにも書かれていません。どちらの場合も、馬の寄生虫への対策を、その予定表が妥当なのかどうか分からないまま任されることになります。そして貼り出された予定表は、獣医がいま拠りどころにしている指針より古いことが少なくありません。
この記事は、そういう立場に置かれた初めての馬主のためのものです。現在の獣医学の指針が何を言っているか、虫卵検査で分かることと分からないこと、日本語で読める情報の現状、獣医に何を聞けばよいかをまとめます。治療計画ではありません。どの薬を、どれだけ、いつ使うかは、かかりつけの獣医が決めることです。
駆虫は暦どおりに行うものではなくなった
何十年ものあいだ、答えは「およそ二か月ごと、毎回違う薬で」でした。米国馬臨床獣医師協会(AAEP)はいま、獣医に逆のことを伝えています。2024年に改訂された内部寄生虫対策の指針は、すべての馬に一年を通じて決まった間隔で駆虫することをやめるよう求め、その例に「二か月ごと」を挙げています。薬の系統をやみくもにローテーションすることもやめるよう書いています。英国馬獣医師協会(BEVA)はもっと率直で、時期を決めて行う定期駆虫は成馬の駆虫法としてもはや容認できないとしています。
理由は薬剤耐性です。投薬を生き延びた虫が子孫を残すので、駆虫の回数が多い厩舎ほど、薬の効かない虫が早く増えます。AAEPによれば、馬用の駆虫薬にはこの40年間、新しい系統が一つも登場しておらず、当面その見込みもありません。放牧される馬なら必ず持っている小円虫については、使われる三つの系統のうち二つに耐性があるものと考え、その厩舎での検査で否定されるまではそう扱うよう、獣医に求めています。まだ効く薬も、効果の続く期間が短くなりました。投薬後に虫卵数が低く保たれる期間は、1990年代には薬によって8〜16週でしたが、2017年以降の研究では4〜5週です。
目標そのものも変わりました。AAEPは、馬の寄生虫をすべてなくすことは目標ではないと書いています。目標は馬を健康に保ち、病気のリスクを下げることで、根絶は不可能なうえ、それを目指せば耐性の発達を早めるだけだからです。
馬の寄生虫について日本語で読める情報は少し古い
日本では、馬の駆虫について国や獣医師団体がまとめた指針は見つかりませんでした。日本語で読める確かな情報は、JRA日高育成牧場のブログ「馬の資料室」の二つの記事で、どちらも海外の指針を紹介したものです。
一つ目の「耐性寄生虫について」は、2013年の文章を2019年に再掲したものです。全頭への駆虫、定期的な駆虫、同じ駆虫剤の継続投与が耐性の背景にあると指摘し、虫卵検査をしてから必要な馬だけを駆虫し、二週間後に再検査して薬の効果を確かめるという考え方を紹介しています。「寄生虫をゼロにする必要がない」という一文も、いまの指針と同じです。
ただし細部は、その後の国際的な指針より古くなっています。この記事は薬剤のローテーションを勧め、駆虫の基準を糞1グラムあたり虫卵250個以上とし、2歳未満の子馬は虫卵数にかかわらず二か月ごとに駆虫するとしています。AAEPの2024年版は、やみくもなローテーションも、年間を通じた固定間隔の駆虫もやめるよう求めています。基準の数字は、下の表のとおり指針ごとに違います。
二つ目の「これからの寄生虫対策」(2021年)は、AAEPの提言の概要を紹介し、駆虫薬の投与前後に虫卵数を数える「糞便虫卵数減少試験」に触れています。紹介されているのは2024年の改訂より前の内容です。この記事は、牧場ごとの寄生虫対策や駆虫の状況をこれから調査・分析するとも書いており、2021年の時点で、日本の現状の把握は今後の課題とされていました。
いまの駆虫計画の形
七つの国と地域の指針を、その著者たちが比べた2025年の総説によると、馬の寄生虫対策はどの指針でも同じ三つの柱に立っています。まず検査し、必要な馬を駆虫し、薬が効いたかを確かめることです。細部は違います。
| 指針 | 検査 | 成馬を駆虫するとき |
|---|---|---|
| AAEP(米国、2024年) | 虫卵検査を年1〜2回 | 全頭に基本の駆虫を年1〜2回。糞1グラムあたり虫卵500個を超える高排出馬には、放牧地で感染が起きる季節にさらに1〜2回 |
| CANTER(英国、2026年) | 虫卵検査を年1〜4回。まずは放牧期に2回 | 処方する人がリスクに応じて200〜500個の範囲で決めた基準を超えたとき |
| ESCCAP(欧州、2019年) | 初年度は少なくとも4回、翌年以降は3回 | 200個を超えたとき。または糞便検査と組み合わせた季節ごとの計画 |
考え方の土台は、虫が均等に分かれていないことです。AAEPは「20/80の法則」を挙げています。群れの馬の2割以下が、虫卵の8割を排出しているというものです。成馬は年が変わっても、高排出か低排出かがあまり変わりません。高排出の馬を見つければ、ほかの馬の駆虫はずっと少なくて済みます。
少なくすることと、やめることは違います。AAEPは全頭への基本の駆虫を残しており、総説がその理由を説明しています。最も危険な大円虫が、駆虫薬の規制が最も厳しいデンマークとスウェーデンで再び現れたからです。ESCCAPの指針も、その季節に一度も駆虫しなかった馬には年末の駆虫を残しています。
子馬や若い馬は別です。AAEPは若い馬に虫卵数にもとづく選択的な駆虫を勧めておらず、英国の指針は5歳未満をすべて高リスクに分類し、ESCCAPは子馬を4〜8週ごとに駆虫する昔のやり方をもはや適切ではないとしています。若い馬の計画は年齢に合わせて、獣医が立てます。
どの指針も求めているのに、いちばん省かれやすいのが効果の確認です。糞便虫卵数減少試験は、駆虫の前と14日後の虫卵数を比べます。AAEPの目安は95%を超える減少で、すべての厩舎で毎年行うよう求めています。
虫卵検査で見えないもの
虫卵検査が見積もるのは、その馬が放牧地にどれだけ円虫の卵を落としているかです。分かるのはそれだけです。AAEPは、虫卵数の多さは体内の虫の数と相関せず、病気の診断に使ってはならないと明記しています。見逃すものも三つあります。通常の方法では10%未満しか見つからない条虫、卵が糞に出ず肛門のまわりの皮膚に付く蟯虫、そして腸の壁に被嚢した小円虫の幼虫です。
予定表が秋や冬に自動的に一回足すのは、この隙間です。ここでは指針どうしも一致していません。条虫について、AAEPは青草の放牧地に出る馬に年一回の駆虫を勧め、それ以上は感染の証拠があるときだけとしています。英国のCANTERの指針は唾液や血液の抗体検査をして、基準を超えた馬を駆虫する方法を取りますが、総説によれば、この検査が市販されているのは英国だけです。
被嚢した小円虫については、AAEPが、決まって行う駆虫に臨床上の利益を示すデータはなく、北米ではこの病気はきわめてまれだとしています。CANTERは、管理がよくリスクの低い成馬には通常必要ないとし、若い馬やリスクの高い馬では検討するよう書いています。総説によれば、北ヨーロッパではこの病気がある程度の頻度で見られます。これはあなたの馬と厩舎についての判断であって、手帳の日付で決まることではありません。
駆虫薬を誰から手に入れるかは国で違う
日本については、確認できたことだけを書きます。農林水産省動物医薬品検査所の動物用医薬品等データベースで馬用の駆虫薬一製品の記録を見ると、規制区分は「劇薬」「指定医薬品」「使用基準が定められた医薬品」で、使用上の注意に「本剤は獣医師の指導の下で使用すること」と書かれています。誰が馬主に販売できるのかは、一次資料で確認できませんでした。入手の方法と使い方は、かかりつけの獣医に聞いてください。
海外では線の引き方がばらばらです。総説によれば、米国では馬の駆虫薬が処方なしで店頭販売されています。欧州連合では規則2019/6の第34条により、食用に供される動物の薬は、製品ごとに除外されない限り処方が必要で、馬もその動物に数えられます。海外の記事に書かれた買い方は、日本の決まりではありません。
駆虫歴の分からない馬を迎えるとき
馬を買うなら、購入前の獣医検査を予約するときに、駆虫と検査の記録を売り手に求めてください。記録がなければ、そのことを獣医に伝えます。CANTERは、信頼できる履歴のない新入馬は検査を受け、中〜高リスクとして扱うこと、放牧地を汚すおそれがなくなるまで放牧しないこと、少なくとも21日間は隔離することを勧めています。預け先のクラブにはそれぞれの駆虫の決まりがあります。馬運車が着く前に、それが何にもとづいているのかを聞いておきましょう。
獣医に聞くこと
- この馬の虫卵検査はいつ行い、いくつを超えたら駆虫しますか。
- この厩舎で、どの駆虫薬がまだ効くかを確かめる減少試験をしたことがありますか。
- この年齢と履歴の馬で、条虫と被嚢した小円虫をどう扱いますか。
- 駆虫薬はどこから、どのような指導のもとで手に入れればよいですか。
クラブの管理者にも一つ聞いてください。放牧地のボロはどのくらいの頻度で拾っていますか。ESCCAPはできれば毎日、少なくとも週二回の除去を勧めており、BEVAは薬ではなくこうした管理こそが寄生虫対策の柱だとしています。
私たちの役割
Hoofineは糞の検査も、薬の処方もできません。できるのは、それができる人を一か所に集めることです。ディレクトリの馬の獣医は、上の質問を持っていく相手です。預託先の厩舎には、移る前に駆虫の方針を聞いてみてください。虫卵検査と駆虫は年間予算の一行で、全体は馬の維持費についての記事にまとめています。



